学校法人安城学園
『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第4章 真の地域貢献めざし - 明日を築く教育 #3 (第160話)
公開日 2012/11/16
 今一番問われなければならないのは「豊かさとは何か」という命題の追求である。この提起には「アメリカン・ウエイ・オブ・ライフ」があった。これは、戦後の日本において理想の生活モデルだった。最も象徴的にはアメリカのホームドラマに描かれるシーン、戦後日本の焼け野原にあって、「ああいう生活がしたい」という羨望が抱かれた。そして「豊かさを追う」ことが、戦後の日本でのライフ・スタイルとなった。だが、いまその豊かさについては「豊かさを問う」時期に入り、これからの日本のライフ・スタイルをどう設計していくかという、新しい模索の時代に移っている。
 寺部理事長はこの時潮をとらえて言う。
 「要するに“クオリティ・オブ・ライフ”(生活の質)を問わなければならない。そしてそれを実現するためには“クオリティ・オブ・ソサエティ”(社会の質)が必要になる」と。「社会がノーマルに機能しないと、個人の生活の質も当然落ちる」わけである。
 そういう意味で、豊田キャンパス、岡崎キャンパスそれぞれに“クオリティ”の追究を図るのである。

「そういう面では岡崎キャンパスにある『家政学部』は、生活の総合性をよく示していると思う。
新たに発足した豊田キャンパスの『現代マネジメント学部』も、単に企業のマネジメントができる人材というだけではなくて、地域社会全体におけるあらゆるマネジメントにも対応できる人材の育成を目指す。それが、まさに“クオリティ・オブ・ソサエティ”を追及するものであろう」

 寺部理事長は現行の学部名についても肯定する。
 こうした“クオリティ・オブ・ソサエティ”、“クオリティ・オブ・ライフ”の追究においては、いわばOECD(経済協力開発機構)の教育の成果と影響に関する情報の中でうたわれる“コンピテンシー(能力・適性・行動特性)”が必要になってくる。
 企業内や地域コミュニティあるいは日常生活のあらゆる場面でコンピテンシーが必要となってくるのだ。
 OECDでは、そのコンピテンシーの概念を「単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含むさまざまな心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力」とし、この能力が「人生の成功や社会の発展にとって有益、必要であり、特定の専門家ではなくすべての個人にとって重要」としている。
 教育改革の一端として、

「これからはコンピテンシーを身につけることが大事だ」

 という論が高まってきており、そしてこうした個人の能力開発において、安城学園では「社会人基礎力」というコンセプトが採用されているのである。
(つづく)
※ 文中敬称略
 
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