学校法人安城学園
『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第2章 刻苦の学園づくり - 新たな礎石を固め #2 (第96話)
公開日 2012/08/29
校内早縫競技会(昭和5年)。成績優秀の生徒は安城町内の丸山製糸などに教えに行った「本校では、服装研究、着付研究、衣服材料研究など、理論的な裏付けを重視しており、技術面でも、ミシン習得は実科高等女学校などは普通3年になってからですが、本校では入学間もない1学期に運動着袋、体育の服装、ブルマー、ユニホームを教材として早くからミシンに習熟させております」

 だいは、自校独自の教育の特色を説明した。だが、特に強調してこう告げるのだった。

「しかし、私どもはまた、仕立直し、廃物利用など更生に力を入れることも教育の特色としており、それによって、基礎から応用へと創造性の伸長を図っております。
質素倹約をモットーに教材の2回使用、仕立直し、繰り回しを重視しておりまして、既習材料速縫い、既習材料復習など、『既習材料にて練習』を中心としております。
また、家庭での母姉弟妹の衣類の仕立直しを励行させ、その仕立直しによって家族の衣類調整の能力を養うようにしております」

 だいは、日本古来伝わる物の命の尊さ、ひいてはすべての物を大切にする精神を教育に活かしているのだった。

「農村における女子教育としては、このように農業と家事を直結させることができて初めてその目的が達せられる」

 鳩山は、これに賛辞を送った。
 これはわが国唯一の農村における女子専門学校として、地域の独自性に立脚し定着した教育方針に対する評価でもあった。
 傍らで主客のやりとりを聞く山崎にも大きな満悦感があった。
 ─物を生かして役立たせることは、経済の道であり、道徳の道であり、生活の極意である。農の意義もまた、勤労と生命の道にほかならない。今や安城女子専門学校は、職業学校を基盤にわが国唯一の農村本位の女子専門学校として、この新興農村の中心地にしっかりと根づくであろう。農業のために誠に喜ばしい限りである。
 山崎は心の中で快哉を叫ぶ思いにあった。
(つづく)
※ 文中敬称略
 
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