『教育にイノベーションを』−安城学園100年の歴史と展望−
第2章 刻苦の学園づくり - 教育方針の確立 #3 (第78話)
公開日 2012/08/03
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読み上げた三蔵は、生徒の反応をうかがうようにちょっと間をおいた。
「よろしいですか。皆さんは自分の持てる能力を無限に伸ばしていける可能性を秘めているんです。しかも、大事なことは、その可能性を実現するのは、自分の意志と努力によって達成されるということです。目標も、いったん覚悟をもって立てたなら、意志と努力で実現していかなければなりません」
三蔵の熱を帯びた説得に、生徒たちも姿勢を正して、三蔵の顔を食い入るように見つめるのだった。
―学校は学習の場であるとともに、自己を高める修練の場として考える―それは、寺部夫妻共通の思いだった。
「私は学校を楽しんで勉強する所とするよりも、むしろ苦しみの道場としたいのです。そして、そんな苦しみにも崩折(くずお)れない、ほんとうに強い、しっかりした主婦を作りたいのです」
だいも、かの『主婦之友』の記事の中でこう言い切った。
「教育とは、一人ひとりの潜在能力を可能性の限界まで開発することです」
人間の潜在能力の無限の可能性を信じた上での教育の役割を、だいはのちにこのように明言することになった。
女性の地位の向上を立学の趣旨として創られた安城裁縫女学校は、その発祥からしだいに変貌(へんぼう)し成長した。安城女子職業学校の教育は、「庶民性」と「先見性」を建学の理念、そしてだいが若き苦難の時代に体得した「真心・努力・奉仕・感謝」の4つの精神を実践していくことを教育の根幹に据えて、“建学の精神”を構築するようになっていった。
(つづく)
※ 文中敬称略
※ 文中敬称略